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書評 - ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦 著


少年とその家族が住む郊外の町に、ある日突然たくさんのペンギンが現れる。
歯科医院のお姉さんは少年に語りかける。
「この謎を解いてごらん」

ペンギンとお姉さんの研究を通しておとなへの階段を登っていく少年の、切なくも温かいファンタジー小説。


本作には、著者の得意技である京都も大学生も不毛な時間も、一切出てこない。

物語は全て、様々な研究活動にいそしむ少年の一人称で描かれる。それゆえにその語り口もこれまでの小説に比べて柔らかく、純粋だ。

 ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。

 だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。

 ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。知りたいことはたくさんある。宇宙のことに興味があるし、生き物や、海や、ロボットにも興味がある。歴史も好きだし、えらい人の伝記とかを読むのも好きだ。ロボットをガレージで作ったことがあるし、「海辺のカフェ」のヤマグチさんに天体望遠鏡をのぞかせてもらったこともある。海はまだ見たことがないけれども、近いうちに探検に行こうと計画をねっている。実物を見るのは大切なことだ。百聞は一見にしかずである。

 他人に負けるのは恥ずかしいことではないが、昨日の自分に負けるのは恥ずかしいことだ。一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりもえらくなる。たとえばぼくが大人になるまでは、まだ長い時間がかかる。今日計算してみたら、ぼくが二十才になるまで、三千と八百八十八日かかることがわかった。そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。その日が来たとき、自分がどれだけえらくなっているか見当もつかない。えらくなりすぎてタイヘンである。みんなびっくりすると思う。結婚してほしいと言ってくる女の人もたくさんいるかもしれない。けれどもぼくはもう相手を決めてしまったので、結婚してあげるわけにはいかないのである。

 もうしわけないと思うけれども、こればかりはしょうがない。




日常と非日常が交錯し、常にどこかふわふわした幻想の中を漂っているかのような感覚に襲われる。
お姉さんや少年の両親をはじめ、どこかリアリティに欠ける登場人物たちは、更にリアリティに欠けるペンギン達とのコントラストによって非常に印象的な存在となっている。

少年とその仲間たちの小さな小さな冒険を通して広がっていく世界や人生についての思索も、この物語が持つ1つの大きなテーマである。



著者の執筆活動を後に振り返った時、ターニングポイントとなるはずの一冊。これまでの作風とは全く異なり、従来の彼の良さの半分が失われたが、それを補って余りある新しいものが生まれたと思う。
新境地を切り開いた成功例として語られるにふさわしい出来。

なんとも美しい小説であった。



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