書評レビュー東大生ブログ 右往左往 森見登美彦「太陽の塔」をさっそく読んだ。
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森見登美彦「太陽の塔」をさっそく読んだ。

アニメ「四畳半神話体系」との衝撃の出会いからいくらも経っていない中、早速読んでみた。

なぜ本書か。
そう聞かれれば、一番有名であり、一番読まれているらしいから、という答え以外持ち合わせていない。

森見登美彦氏の書く世界は、どれも共通点があり、それぞれに繋がりがあるようだ。

京都。
大学生。
色恋沙汰との強烈な内面的対峙。

主人公の内面に渦巻く妄想はとどまる所を知らず、人生とはなんだ、恋とは、いやその前に私は選ばれた人間なのだ、と、過ぎゆく日常・非日常の中を生きていく。
文字のほとんどが主人公の思索の描写に費やされており、その出口の無い迷路のような思考は、読者を森見ワールドに深く引きずり込む。
これほどまでに虚無感が募り先の見えないゴミ溜めを描きつつ、大いに笑わせてくれる著者の力量はさすが。


小説はあまり評するものではないと勝手に思っているのでこれぐらいにしておくが、おもしろく一気に読みとおせた。

ただ、近しい幾人かに聞いたところによると、どうも文体の癖が強く、合わない人はとことん合わないらしい。
そんな違和感は微塵も感じず、おもしろいおもしろいと読みふけっていた自分は、知らないうちにかの地の遺伝子を色濃く受け継いでいたのだろうかと、少し嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになった。

思えば、これらの作品群で描写されているような思想的濃密さを求めてかの地の最高学府の門を叩いたのも、遠い昔のように感じられる。

京大には自分のようにほぼ勉強せずに大学に入ってくる捻くれ者ばかりが蠢いていると勝手に想像していたのだが、実際はそんなこともなく、聞けば、近年はごく普通の大学生がほとんどを占めるような状況になってしまったようだ。「真面目に受験勉強なぞするやつは東大へ行けばいい。そんな薄っぺらい奴はこっちから願い下げだ!」と考えていた自分も、ほどなくして勉強の大切さに気付いた。

そんな事で、大学一回生で味わったある種の失望を乗り越えたはいいが、現実世界が見えなくなるほどの濃い妄想の霧中に暮らすことはあまりなかった。

登美彦氏が在学中のころに出会いたかったものだ、と今更になって思う。
その時分は、まだまだ古き良き(?)京大生が多くいただろうに。


何にしろ、そこには確かに自由の精神が芽吹いていた。それを感じることはできた。
その心地よさの中にいてぬくぬくと過ごした4年間は、登美彦作品の主人公が感じる思いと紛れもなく同じものだった。
「大学生活の一切は不毛である」

なにせ、教授が学生に「講義に出てるなんて、あなたたち暇なんですね」とのたまうような大学である。
アメリカから帰って来たばかりの湯川秀樹博士が、「まぁ適当にやりなさい」というニュアンスの言葉を放った時から、現在の京都大学の思想の基礎となる大きな潮流が動き始めたという。
これらは多義的な解釈が可能であるが、それでもなお、緩慢かつ現世から遠く隔離された雰囲気がキャンパス内に流れていたことは事実だ。廃人製造所。そう呼ばれるのも無理からぬ話だ。

その根底には、大学構内に脈々と流れる思想の系譜がある事は疑いの余地はないのだが、それ以前に京都というこれまた異端の町が大きな影響を及ぼしているように思う。いざ京都を離れてみると、その想いはより一層大きくなるばかりだ。

1000年もの間、いつか都が戻ってくると信じ続けて暮らす人々がいる事を想像できるだろうか。
文化・伝統という安易な言葉では到底表現できそうにないほど強く濃く、街中に流れる粘度の高い空気を想像する事ができるだろうか。

「京都では、時間がゆっくりと流れるているんだよ」
20余年暮らした京都を去る新幹線のホームで涙したという恩師は、そう呟いた。



あー。
帰りたい。
第二の故郷以上の意味を持つ、あの場所へ。

登美彦氏が刹那的に垣間見せてくれる懐かしさだけで、満足できるといいんだが。


太陽の塔 (新潮文庫)

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