書評レビュー東大生ブログ 右往左往 トルストイ「人生論」 -幸福への止揚
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トルストイ「人生論」 -幸福への止揚

人生論 (新潮文庫)
トルストイ 著

ひさしぶりに読んだ。
自分とは意見が異なり、それでもなお一生本棚に残るであろう本を。


「人生」論というより「生命と幸福」論というタイトルが合っている本書は、ロシア文学の巨匠である著者による、人間がいかにして幸福に生きるかを説いた論考集。

”動物的個我において一時の快楽を追究しても虚しさが残るだけであり、人間が本来知っている理性的意識に従って、自分以外のすべての幸福を願う事で真の幸福を得ることができる。
動物的な生には時間的制約があるが、理性的存在は時間・空間的な生を超えて生き続ける。”

本書の論旨はこれに尽きる。
この主張を、手を変え品を変え説明し続けるという紙面構成となっている。

「他人や社会に尽くす事が本当の幸福だ」というような言説はよく目にするが、本書はこれらの薄っぺらい論を超えて本質を語る。


動物的な自我が持つ欲求を満たす事で得られるのは、決して持続的な幸福ではなく、死への恐怖から逃れられるものでもない。
真の生命は、時間的・空間的に認識されるものではなく、より上位の次元に現れる。真の生命が持つ理性に従って、その唯一でかつ完全な活動である「愛」を実践する事で、真の幸福にたどり着ける。
そのための道具として、動物的個我を従属させることこそ、人間が目指すべき道である。
こう、著者は言う。


堅牢な論理展開と深く鋭い洞察によって真の幸福とは何かを説く著者に、その尽くされた言葉に、圧倒される。

そして、だからこそ精一杯の意志を持って、こう唱えたくなる。

それが真の幸福であれば、そんなものクソ食らえだ、と。


動物的本能に従って生きる事が全く儚い灯であっても、その行動が刹那の快楽しか持ちえないとしても、それしか知らぬ動物もいるのだ。
生まれた瞬間からすこしずつ死んでいく事実を認め、それでもなお瞬間瞬間の快楽の中に時空を超えた幸福を見る動物もいるのだ。


好きな言葉がある。


社会や私生活の事情で、
多くの人は日々の享楽をあきらめてしまう。
日々の営みを軽んじ、一生を精神論や人生論という
五感とは関係ない理論でとらえようとする。
でも、日々にすべての事は起こり、
日々の“いつか”に人生の終わりはくる。
金は使わなければ貯まるが、
時は使わなければ消え去り貯めることはできない。

森永博志(エディター)



結局、知覚でき、認識できる世界にしか住む事は出来ないんだと思う。


思想は言葉で為され、言葉は確実に時間軸を持つ。
永遠の生の前提として死してなお人々に覚えられるためには、空間的・時間的な伝達ネットワークという、言うまでもない物理モデルを用いる。
そう、彼が超越しようとした、従属させようとした時空間は、決して越えられない壁となって高次元の幸福の前に立ち現れる。

それなしには幸福なんてとっても成り立たない。


圧倒的なリアルの中に、永遠を見ることができる。そんな感覚を我々は持っているはずだ。
生得的に。
理性よりも自明なものとして。



なんにしろ、幸福論についてのアンチテーゼとして非常にためになった。
自分がどんなスタンスを取るかに拠らず、必読の書であることには間違いはない。


一点だけ、自らが持つ生得的な理性をいかにして喚起するかについて、本書では全く触れられていなかった。それが引っかかる自分は”ゆとり”なんだろうか・・・


訳が非常に良く、なめらかな文体で記述されていたので、とても読みやすかった。
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No title

理性で欲を支配することで快楽が知覚できるのならばそれもありだと思うんですよね。

No title

>とらさん
そうですねー。

本書においては、理性がどういうものかを厳密に定義すると言う事はしていないので、その部分で読後にもやもや感がありましたが。
"水の流れの音と梢のそよぎに寝かしつけられるようにして、ぼくたちは眠りに落ち、そして、世界が若返った夢を見るのだ。"
- J 「ボートの三人男」
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