書評レビュー東大生ブログ 右往左往 2011年02月
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郷里のマンガ論

修論提出を終え、卒業が確定した後初めての更新である。
修論から得た学びを書くと思いきや、そんなものは全く書かず、極めて懐古主義的な漫画/マンガ論を綴る。といっても、本稿はTwitter上で数回にわたりつぶやいた内容をまとめて加筆し、保存しておくことが目的だったりもするのだが。


数日前から実家に帰省しているのだが、これまでの例に漏れず、小さい頃読んでいた漫画を引っ張りだしてベッドの上でゴロゴロしながら読みふけっていると1日が終わるといった生活をしている。

実家とばあちゃん家が隣合わせという事もあり、実家の書架には親子3代にわたる蔵書が混在しており、自分が小さい頃読んでいた漫画は、同時に母親が小さい頃読んでいた漫画だったり、じいちゃんが読んでいたものだったりする。つまり、古いものから新しいものまでが乱雑に取り揃えてあって、幼少の時分には「のらくろ」から「ワンピース」までと、時空を超えて広大な守備範囲を誇ったものである。

そんなよく分からない読書体験を経て高校までを卒業し、めまぐるしく流行に追われる外の世界に飛び出しても、たまの帰省の際に必ず読み返したくなるのは、ちょっと古めの、現代の若者はあまり知らないような漫画である。

「ブラックジャック」を読んでいる若者はどれくらいいるだろうか、「バビル2世」は古典と呼ばれるのだろうか。

それらの本には、ジャンプやマガジン系列のマンガにはない、切なくも濃厚な魅力がある。なにかそれらの漫画を手に取る事を強いるような、魔力がある。

昔の漫画読んでると、それらが共通して世界文学として読める内容だという事に気づく。普遍的な「世界」や「人間」を主題として相手取り、それに真っ正面から挑んでいく鋭い記述。これらの漫画は、文学であった。少なくとも、日本文学であった。

これと比較して、現代のマンガは単なるエンターテインメントに堕している。そう言い切っていいだろう。「愛」や「友情」といったテーマにストーリーを与え、抑揚をつけて巧みに見せることに成功はしているが、それらの本質が表象されたものでは一切ない。それゆえに、どのマンガも均質化され、ここしばらくは堂々巡りを繰り返している。

この内容の変化を追って行くと、手塚治虫は紛れもなく日本が経験した漫画→マンガの変遷における一つのエポックメイキングな「事件」であり、石ノ森章太郎らもその流れを汲む。その頃すでに彼らの手によってマンガがエンターテインメントの極として練り上げられたからこそ、今の日本のアニメ・マンガが世界中に輸出できているという側面もある。(驚くなかれ、現代のマンガのすべてが、彼らの創り上げた世界に帰するのだ。)
今のマンガ・アニメはその頃のパクリだから、それらが文学性を捨てて展開した世界観が人口に膾炙し、むしろ世界に羽ばたいたという事実は興味深い。

しかしながら、この漫画の質的変化によって日本が支払った代償は大きいとも思う。

彼らトキワ荘の住人たちが躍動していた時代には、それまでの文学性を備えた漫画と、新たな方向に舵を切ったマンガが、絶妙な配分でバランスしていた。彼らの作品は、今でもページを繰ると活き活きとした表情で読者に何か大きなことを語りかける。現代のマンガは、どうだろう。


そんなことが頭から離れないから、声を大にして言いたいのである。
「あの頃は、よかったな」と。


軽く調べたら、やはりというべきか、手塚治虫は幼少期からミッキーマウスの影響を強く受けていたらしい。ディズニーは純度100%の娯楽を追求したエンターテインメントの王様みたいなものであるから、それに傾倒した手塚が生み出した作品の数々が、それまでの日本漫画とは一線を画すものであったとしても驚くには値しない。一人の迷える天才がなぜ多くを捨ててまでその領域に日本マンガの夜明けを見たのかは今となっては想像するしかないのだが、もっと別の展開があったはずだと、遠くはなれた未来から思う。彼が生み出した危うい均衡は、今では大きく傾いてしまったのだから。

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"水の流れの音と梢のそよぎに寝かしつけられるようにして、ぼくたちは眠りに落ち、そして、世界が若返った夢を見るのだ。"
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